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【2025年版】フランス出張の準備マニュアル|入国・ビザ・市内移動の徹底解説

投稿日:2023.12.18 / 最終更新日:2025.12.30

フランス出張の概要

フランスは、ハイテク産業、ファッション、航空宇宙、食品、エネルギーなど多岐にわたる分野で世界をリードする経済大国です。特に首都パリは欧州ビジネスの中核を担い、国際会議の開催数でも常に世界トップクラスを誇ります。

近年のフランス出張では、デジタル化された新たな入国管理システムへの対応や、ストライキ等の現地情勢を考慮した余裕のあるスケジューリングが成功の鍵となります。

ビジネス渡航で想定される主な都市・空港

フランスの交通網はパリを中心に構築されており、日本からの直行便はパリ=シャルル・ド・ゴール空港(CDG)に集中しています。地方都市へは、CDGからの国内線乗り継ぎ、または高速鉄道TGVを利用するのが一般的です。

都市名特徴・主な産業主な空港・アクセス
パリ経済・政治・文化の全中心地。ラ・デファンス地区にはグローバル企業の本社が集結。シャルル・ド・ゴール空港(CDG)、オルリー空港(ORY)
リヨンバイオテクノロジー、化学、繊維産業の拠点。フランス第2の経済規模を誇る。リヨン・サン=テグジュペリ空港(LYS)
トゥールーズエアバス社が拠点を置く欧州航空宇宙産業の中心地。トゥールーズ・ブラニャック空港(TLS)
ニースソフィア・アンティポリス(ハイテク・パーク)を擁し、IT・通信産業が盛ん。ニース・コート・ダジュール空港(NCE)

出張者が事前に押さえるべきポイント(ビザ、パスポート、有効期限など)

フランスへの入国は、欧州の共通ルールである「シェンゲン協定」に基づきます。以下の項目に一つでも不備があると、搭乗拒否や入国拒否のリスクがあるため、出発前の厳格な確認が必要です。

ビザ(査証)の要否

180日中最大90日以内の滞在: 商談、会議出席、市場調査等の一般的なビジネス目的であれば、日本国籍者は原則としてビザ不要です。なお、報酬を伴う活動( フランス国内で実務に従事し、現地企業から報酬を得る)の場合は、期間に関わらず就労許可が必要です。

パスポートの有効期間

「フランス(シェンゲン圏)出国予定日から3ヶ月以上」の有効期間が残っている必要があります。さらに、パスポート自体が「10年以内に発行されたもの」であることも条件です。

シェンゲン協定の「90日ルール」

あらゆる180日の期間内で合計90日までの滞在が可能です。近隣国(ベルギー、ドイツ等)への移動も合算されるため、頻繁に欧州出張がある方は残日数の管理が必須です。

最新の入国システム(EES / ETIAS)

・EES(出入国システム): 2025年10月12日より運用が開始されており、入国時の顔写真・指紋登録が義務化されています。

・ETIAS(エティアス): 2026年より導入予定の事前渡航認証です。2025年内はまだ不要ですが、今後の動向に注意が必要です。

日本人出張者のビザ要件

フランスへのビジネス渡航におけるビザの要否は、滞在日数と「現地で報酬が発生するかどうか」によって決まります。日本国籍者の場合、一般的な短期出張であればビザなしでの渡航が可能ですが、中長期の滞在や就労には厳格な審査が伴います。。

短期商用(30日以内)のビザ要否と条件(ビザ免除・滞在許可日数)

日本国籍者が30日以内の短期商用目的でフランスに渡航する場合、ビザ(査証)の取得は不要です。

対象となる活動

商談、会議・セミナーへの出席、契約調印、市場調査、アフターサービス(修理・設置の指導等)、文化交流など。

滞在許可日数(シェンゲン協定)

実際には「30日」という括りではなく、シェンゲン協定のルールに基づき、「あらゆる180日の期間内で最大90日まで」の無査証滞在が認められています。

注意点

フランスに入国する前に他のシェンゲン協定国(ドイツ、オランダ等)に滞在していた場合、その日数も90日のカウントに含まれます。フランス国内の企業から給与などの報酬を得る場合は、期間に関わらず就労許可が必要です。

30日超・就業目的・駐在の場合に必要なビザの種類の概要

滞在が90日(実務上は余裕を見て30日超のプロジェクト等)を超える場合や、現地法人の指揮下で労働を行う場合は、適切な長期ビザ(Visa de Long Séjour)の取得が必要です。

短期就労者用(Temporary Worker)

90日以内の滞在であっても、フランス国内で実際に「労働(報酬を伴う実務)」を行う場合に必要となることがあります。

企業内転勤(ICT)ビザ

日本の本社からフランスの支店やグループ会社に派遣される駐在員向けのビザです。

パスポート・タラン(Talent Passport)

 高度な専門知識を持つ技術者、研究者、経営者などが対象となる、比較的優遇された長期滞在・就労許可です。

長期ビザ(VLS-TS)

90日を超えて1年以内の滞在を目的とする場合に発行されます。入国後、オンラインでの有効化手続き(バリデーション)が必要になる点が特徴です。

ビザ情報を確認すべき公式窓口

ビザの規定は、国際情勢やフランス国内の法改正により予告なく変更されることがあります。申請にあたっては、必ず以下の公式窓口で最新情報を確認してください。

France-Visas(フランス政府公式ビザポータル)

フランス政府による公式なビザ申請・確認サイトです。質問に答える形式でビザの要否を確認できる「Visa Wizard」機能が便利です。

VFS Global(フランスビザ申請センター) 

フランス大使館より委託を受けてビザ申請の受付業務を行う機関です。実際の申請予約や書類提出はこちらを通じて行います。

【重要】2026年以降の「ETIAS(エティアス)」導入について

現在、欧州連合(EU)は新たな電子渡航認証システム「ETIAS」の導入を進めています。

  • 開始予定: 2026年第4四半期(10月〜12月頃)に運用開始予定。
  • 内容: ビザ免除国(日本含む)の渡航者も、出発前にオンラインで申請し、許可を得る必要があります(有効期間3年、申請料7ユーロの見込み)。
  • 移行期間: 導入直後は半年程度の猶予期間が設けられる予定ですが、2026年以降の出張については最新情報の確認が不可欠です。

ETIAS(エティアス)はいつから必要?2026年導入予定の最新情報解説

渡航前チェックリスト(企業・出張者向け)

「うっかり」が大きなトラブルに繋がるのが海外出張です。管理者・出張者それぞれの視点で確認すべき事項をまとめました。

【出張者向け】必須書類・手続き

  • パスポート: 出国予定日から3ヶ月以上の有効期限(6ヶ月以上を推奨)。
  • 航空券(eチケット): 往復または第3国へ出国する航空券の控え。
  • 宿泊証明: ホテルの予約確認書(入国審査で提示を求められる場合があります)。
  • 海外旅行保険付帯証明書: クレジットカード付帯の場合も、英文の証明書を別途発行しておくことをお勧めします。
  • 出張命令書・招待状: (任意)取引先からの招待状や社内の出張命令書(英文)があると、入国審査がスムーズになります。

【出張者向け】支払い・通信手段

  • クレジットカード: フランスはキャッシュレス社会ですが、決済エラーに備え、異なる国際ブランド(VisaとMastercardなど)を2枚以上携行してください。
  • 通信環境(SIM/Wi-Fi): 現地で即座に地図や交通情報を確認できるよう、eSIMやレンタルWi-Fiの手配。
  • コンセント変換プラグ: フランスはCタイプまたはSEタイプです。日本のAタイプはそのまま使えません。

【管理者向け】チェック事項

  • 緊急連絡網の整備: 万が一の事故やテロ、ストライキ発生時の連絡ルートの再確認。
  • 外務省「たびレジ」への登録: 現地の最新安全情報をリアルタイムで受信できるよう、出張者を登録。
  • トラブル回避のポイント: フランスでは鉄道や航空機のストライキ(Grève)が頻繁に発生します。出張者が現地の運行状況を確認できるSNCF(フランス国鉄)やRATP(パリ交通公団)の公式アプリを事前にインストールしておくよう指導すると、現場の混乱を最小限に抑えられます。
フランス入国手続きの流れ(到着空港での動き方)

フランス入国手続きの流れ(到着空港での動き方)

パリ=シャルル・ド・ゴール空港(CDG)に到着してからの流れは以下の通りです。2025年末現在、システム移行に伴い審査に時間がかかる傾向があるため、余裕を持ったスケジュール設定が推奨されます。

入国審査(Passport Control / Immigration)

・レーンの選択: 「EU/EEA」以外の「All Passports」の列に並びます。

・EES(出入国システム)への対応: 2025年10月以降、初回の入国時に顔写真の撮影と4本の指紋採取が義務化されました。これまでのスタンプに代わるデジタル管理への移行プロセスです。

・自動ゲート(PARAFE): 12歳以上のICパスポート保持者は自動ゲートを利用できる場合がありますが、EES登録状況や混雑により有人窓口へ誘導されることもあります。

手荷物受取(Baggage Claim)

掲示板で便名を確認し、ターンテーブルへ移動します。ロストバゲージに備え、手荷物引換証(バゲージタグ)は必ず手元に保管しておきましょう。

税関(Customs)

申告品がなければ「Green Lane(Nothing to Declare)」を通過します。

空港から市内までの移動手段

CDG空港からパリ市内への移動は、定額タクシーまたはロワシーバスがビジネス利用では一般的です。

手段料金(目安)所要時間特徴
タクシー右岸:56€ / 左岸:65€45〜75分完全定額制。 荷物が多い場合や、ホテルへ直行したいビジネス利用に最適。
ロワシーバス (RoissyBus)約16.60€約60分パリ中心部(オペラ座)直行のバス。Wi-Fi完備でコストパフォーマンスが良い。
RER B線(鉄道)約11.80€〜約35分最速ですが、治安面やストライキのリスクがあるため、出張初心者には不向きです。
配車アプリ (Uber等)変動制45〜75分予約は容易ですが、タクシーより高くなる場合もあります。

ビジネス渡航における注意点

非正規タクシーの勧誘

 ロビー内で「Taxi?」と声をかけてくる人物はすべて白タクです。必ず「公式のタクシー乗り場」から乗車してください。

ストライキの情報

フランスでは公共交通機関のストライキが頻発します。渡航前に現地のニュースやSNCF(フランス国鉄)のサイトで運行状況を確認することが重要です。

滞在中の注意点(ビジネス慣行・ルール)

フランスのビジネスシーンでは、論理的な議論を好む一方で、個人的な信頼関係や礼儀(エチケット)が非常に重視されます。

挨拶がすべての基本

フランスでは、店舗に入る際や受付、会議の冒頭で「Bonjour(ボンジュール)」と挨拶することが鉄則です。

実務上のポイント

無言で入店したり、挨拶なしに本題に入るのはマスカテジー(無作法)と見なされます。別れ際の「Au revoir(オ ルヴォワール)」もセットで習慣づけましょう。

ビジネスミーティングのスタイル

アポイントメント

少なくとも2週間前までの予約が望ましいです。バカンスシーズン(7〜8月)やクリスマス時期は、極端に連絡が取りづらくなるため注意が必要です。

握手とアイコンタクト

挨拶はしっかりとした握手と、相手の目を見ることが基本です。

議論の文化

フランス人は自らの意見をはっきりと述べ、議論することを好みます。反対意見が出ても個人攻撃ではなく、ビジネスをより良くするためのプロセスとして捉える姿勢が求められます。

安全対策とリスク管理

スリへの警戒

パリ市内、特に地下鉄(メトロ)や観光地周辺では、組織的なスリが多発しています。

対策

スマートフォンをズボンの後ろポケットに入れない、バッグは常に体の前で保持する、カフェのテーブルの上にスマホを置かない、といった基本的な対策を徹底してください。

デモ・ストライキへの対応

労働組合によるストライキ(Grève)は日常的に発生します。公共交通機関が止まることを想定し、常に代替手段(配車アプリや徒歩圏内の宿泊など)を検討しておく必要があります。

出国時の手続きとオーバーステイ対策

帰国時のトラブルを防ぎ、次回の渡航をスムーズにするための重要事項です。

出国手続きの流れ(CDG空港の場合)

免税手続き(PABLO)

  • 買い物をして免税を受ける場合、チェックイン前に空港内の「PABLO」端末でバーコードをスキャンします。承認印(電子認証)が得られれば完了です。

出国審査(Passport Control):

  • 2025年以降、EES(出入国システム)により、入国時と同様にデジタル管理が行われます。
  • パスポートにスタンプが押されない運用に移行しているため、自身の滞在日数はデジタルで記録されています。

保安検査

  • 液体類やノートPCの取り出しルールを遵守し、余裕を持って搭乗ゲートへ向かってください。

オーバーステイ対策(シェンゲン協定の遵守)

日本国籍者がビザなしで滞在できるのは、「過去180日間のうち合計90日まで」です。これを1日でも超えるとオーバーステイとなり、高額な罰金や今後のEU圏への入国禁止措置が取られるリスクがあります。

実務上のアドバイス

シェンゲン協定の「90日ルール」は、フランス一国ではなく加盟国すべての合計です。例えば、「先月ドイツに2週間いた」場合、今回のフランス滞在に使える残数は減っています。管理者は、出張者の過去半年の欧州渡航歴を合算して管理する体制を整えましょう。

参考リンク・公式情報

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