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出張時のホテル手配のまとめ:宿泊相場からホテル選定方法、精算の流れを解説
宿泊税とは、ホテルや旅館などで宿泊をすると発生する税金です。出張で宿泊した際に「ホテル代は予約時に支払ったけど、さらに宿泊税もかかるの?」と驚かれる方もいるでしょう。宿泊税は地域の観光価値向上のために自治体単位で徴収する税金です。また、宿泊施設で関連する税金としては、その他に入湯税もあります。入湯税は、温泉施設がある市町村が、温泉を利用する入浴客に対して課税する地方税法に定める市町村税です。本記事では、宿泊税及び入湯税について具体的な金額や勘定科目等について解説します。
もくじ
宿泊税とは「地方税」に分類され、地方自治体が徴収する税金です。税の目的としては、地方自治体が観光資源の整備や地域活性化を目的都市、宿泊施設に滞在する顧客に貸す税金として導入されています。宿泊者が、ホテルなどに支払い、そのホテルなどが地方自治体に税を納めます。
宿泊税は、宿泊料金に基づいて課される税金であり、1泊あたりの料金が一定額を超える場合に課税対象となります。
ただし、目的や特定の施設においては対象外となる場合もあります。例えば、学校行事に伴う宿泊や民泊の利用については課税対象外となるケースがあります。なお、基準は自治体によって異なりますので最新動向を把握しておきましょう。宿泊税の基準に関する詳細は、自治体に掲載されています。
宿泊税は2002年から始まりました。初めて導入した自治体は東京都で、その10年後の2017年に大阪府、現在は全国へ導入の動きが広がっています。2025年1月時点では、11の自治体が宿泊税を定めています。
宿泊税の課税額は自治体ごとに税率が異なり、「素泊まりの料金が●●円以上は課税、●●円未満の場合は非課税」などと分類しています。また、適用対象も自治体によって異なるので詳細はそれぞれの自治体のホームページをご覧ください。
自治体名 | 導入時期 | 宿泊税 | 関連リンク |
---|---|---|---|
東京都 | 2002年10月1日 | 10,000円以上15,000円未満 → 100円 15,000円以上 → 200円 | 東京都主税局 |
大阪府 | 2017年1月1日 | 7,000円以上15,000円未満 → 100円 15,000円以上20,000円未満 → 200円 20,000円以上 → 300円 | 大阪府ホームページ |
京都市(京都府) | 2018年10月1日 | 20,000円未満 → 200円 20,000円以上50,000円未満 → 500円 50,000円以上 → 1,000円 | 京都市ホームページ |
金沢市(石川県) | 2019年4月1日 | 20,000円未満 → 200円 20,000円以上 → 500円 | 金沢市ホームページ |
倶知安町(北海道) | 2019年11月1日 | 1人1泊、1棟1泊、1部屋1泊 の宿泊料金の2% ※各宿泊施設の宿泊料金の算定方法によって選択 | 倶知安町ホームページ |
福岡市(福岡県) | 2020年4月1日 | 500円(県税50円+市税450円) | 福岡県ホームページ |
北九州市(福岡県) | 2020年4月1日 | 200円(県税50円+市税150円) | 福岡県ホームページ |
福岡県 | 2020年4月1日 | 福岡市・北九州市→50円 (福岡市・北九州市以外)→ 200円 | 福岡県ホームページ |
長崎市(長崎県) | 2023年4月1日 | 10,000円未満→100円 10,000円以上20,000円未満→200円 20,000円以上→500円 | 長崎市ホームページ |
ニセコ町(北海道) | 2024年11月1日 | 20,000円未満→200円 20,000円以上50,000円未満→500円 50,000円以上100,000円未満→1,000円 100,000円以上のもの→2,000円 | ニセコ町ホームページ |
常滑市(愛知県) | 2025年1月6日 | 200円 | 常滑市ホームページ |
宿泊税を一番最初に始めた東京都では、インバウンドに対しての観光事業者の支援や人材育成、多種多様の文化・習慣に対応した設備環境の向上、観光地のライトアップの導入などに使われています。また、日本の文化を感じる京都では、文化振興、公共交通機関の混雑対策などより観光に特化した分野で用いられています。そして、福岡県では、バリアフリーの整備、災害対応強化などにも使われています。このように、宿泊税は観光における様々な分野で活用されています。
宿泊税は原則、勘定科目は租税公課として仕訳します。ただし、宿泊施設の請求書や領収書には、宿泊税の記載がある場合とそうでない場合があります。記載がある場合は租税公課と記載すればよいですが、ない場合はどうしたらよいでしょう。以下では、宿泊税に関する記載のあるなしに分けて勘定科目を解説します。
宿泊施設の請求書や領収書に宿泊税の記載がある場合の勘定科目は、租税公課になります。具体的な仕訳の例を見てみましょう。
例:宿泊費(ホテル代)11,000円(うち消費税 10% 1,000円)、宿泊税200円の合計11,200円をホテルに現金で支払った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
旅費交通費(課税仕入) | 11,000 | 現金 | 11,200 |
租税公課(不課税仕入) | 200 |
請求書や領収書に宿泊税の記載がない場合は、旅費交通費として処理することが一般的です。この場合、宿泊費を含め支払った全額を課税仕入れとして計上することが可能です。具体的な例は以下の通りです。
例:宿泊費(ホテル代)11,200円を支払った。領収書には宿泊税の記載はなかった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
旅費交通費(課税仕入) | 11,200 | 現金 | 11,200 |
ホテルの宿泊費用には消費税がかかりますが、宿泊税は消費税の対象外となります。冒頭で解説したように宿泊税は地方自治体に収められるものであるため、ホテルを利用した対価として支払うものではありません。そのため課税の4要件に該当せず、消費税の課税対象外(不課税取引)となります。
【消費税の対象となる要件】 1. 国内において行うものであること 2. 事業者が事業として行うものであること 3. 対価を得て行うものであること 4. 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること |
ただし、請求書や領収書に宿泊税の記載がない場合は、宿泊税の区別がつかないため、宿泊費を含め支払った全額を課税仕入れとして計上します。
出張費の費目や課税・不課税について知りたい方はこちらをご覧ください。
出張費はどこまでが対象範囲?課税対象?出張費の基礎知識をおさらい
入湯税とは、温泉を利用した場合に支払う税金 のことです。宿泊施設に温泉施設が備わっている場合は、宿泊の際に入湯税を支払う必要があります。入湯税は温泉の周りの環境改善のために徴収される市町村税であり、施設の運営者が宿泊者に代わって納めます。
総務省が原則定めている入湯税は「150円」ですが、実際は市区町村によって異なり、それぞれの市区町村で独自に定めることもできます。
入湯税の勘定科目や消費税の取り扱いについては、原則、宿泊税と同じと考えてよいでしょう。つまり、ホテル側の領収書に入湯税の記載があるか否かによって勘定科目や消費税の取り扱いが異なってきます。以下では、領収書の記載内容別に仕分けの事例を紹介します。
宿泊施設の請求書や領収書に入湯税の記載がある場合の勘定科目は、租税公課になります。
例:宿泊費(ホテル代)11,000円(うち消費税 10% 1,000円)、宿泊税200円、入湯税150円の合計11,350円をホテルに現金で支払った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
旅費交通費(課税仕入) | 11,000 | 現金 | 11,350 |
租税公課(不課税仕入) | 200 | ||
租税公課(不課税仕入) | 150 |
請求書や領収書に宿泊税の記載がない場合は、宿泊費を含め支払った全額を課税仕入れとして計上することが可能です。その場合の勘定科目は、旅費交通費になります。
宿泊施設の請求書や領収書に宿泊税の記載がある場合の勘定科目は、租税公課になります。
例:宿泊費(ホテル代)11,350円を支払った。領収書には宿泊税や入湯税の記載はなかった。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
旅費交通費(課税仕入) | 11,350 | 現金 | 11,350 |
上記のように、宿泊税や入湯税は、明らかになっている場合とそうでない場合で異なる勘定科目を用いて経費処理する必要があります。
宿泊税や入湯税は原則、現地での支払いとなります。オンライン予約サイトでホテルを予約し、事前払いをした場合も現地請求があるので気を付けましょう。同様に、海外では、リゾートフィーという名目で、各ホテルが独自に設けている追加費用が存在します。リゾートフィーはハワイやラスベガスなどでは一般的であり、現地払いが原則になるので事前に確認しましょう。そのため、宿泊先で宿泊税を支払ったら、必ず領収書をもらい社内で精算しましょう。
宿泊税は、地方自治体が課す税金であり、宿泊施設は顧客から一時的に預かっているにすぎません。そのため、仕訳における勘定科目も租税公課となり、宿泊費とは異なります。特に領収書に宿泊税が明記されている場合は、宿泊費と明確に区分して仕訳しましょう。
宿泊税は自治体ごとに異なります。近年、仕訳ソフトでは自動仕分けが行われますが、宿泊税を自動で取り込んでしまうと金額の誤りなどが発生しえます。そのため、目視でのチェックを必ず行い、自治体の最新の課税基準に適しているか確認しましょう。
出張先に多い東京・福岡を始め、宿泊税は今後も導入する自治体が増えていく予定です。また、それぞれの自治体により宿泊税の課税ルールが異なります。ホテルの予約をする際は、宿泊税の有無も併せて確認し宿泊先を選択しましょう。