もくじ
香港は「アジアの金融・物流のハブ」として、日本企業にとって極めて重要なビジネス拠点です。狭いエリアに機能が凝縮されているため非常に効率的な出張が可能ですが、入出境ルールや現地インフラは常にアップデートされています。
円滑な出張を実現するためには、まず香港の地理的特性と、渡航の根幹となる法的要件を正しく把握することが第一歩となります。
香港は大きく分けて「香港島」「九龍(カウルーン)」「新界(ニューテリトリー)」の3つのエリアで構成されています。
世界屈指のハブ空港であり、日本からの直行便のほとんどがここに到着します。市内中心部へは「エアポートエクスプレス」を利用して約24分という抜群のアクセスを誇ります。
香港島側に位置する、世界的な金融機関や法律事務所が集まるビジネスの中心地です。高層ビルが立ち並び、多くの日系企業もこのエリアに拠点を構えています。
九龍側に位置し、貿易、アパレル、物流関連の企業が多く集まります。
製造業やテック企業の出張では、香港を経由して中国本土の深センへ陸路で移動するケースも多く見られます。
香港は他の国・地域に比べて入国制限が緩やかですが、ビジネス渡航において「うっかりミス」が許されない重要な項目が3点あります。
| 項目 | 内容・注意点 |
|---|---|
| ビザ(査証) | 90日以内の滞在であれば、日本国パスポート保持者はビザ不要です。ただし、現地での「就業(給与が発生する労働)」には就業ビザが必要となるため、商談や会議出席の範囲を超えないか確認が必要です。 |
| パスポート有効期限 | 香港入国時に「滞在予定日数+1ヶ月以上」の有効期限が残っている必要があります。ただし、不測の事態(滞在延長など)を考慮し、残り6ヶ月以上の状態で渡航するのがビジネス上のリスク管理として推奨されます。 |
| 入国カード | 以前は紙の入国カードが必要でしたが、現在は段階的にデジタル化が進んでいます。最新の運用状況(e-Channelの利用可否など)を直前に確認しましょう。 |
香港はビジネスフレンドリーな入国管理制度を維持しており、日本からの一般的な出張であれば手続きは簡素です。しかし、現地で「報酬を得る活動」を行う場合や、長期滞在になる場合は、厳格なビザ申請が求められます。
日本国籍のパスポートを保持している場合、90日以内の短期滞在であればビザ(査証)なしで入国が可能です。
注意: 2026年現在、以前は必要だった「出入国カード(紙)」の提出は、多くのケースでデジタル化または簡略化されています。ただし、入国時に渡される「入境ラベル(スリップ)」は、滞在期限を証明する唯一の書類ですので、出国時まで大切に保管してください。
滞在が90日を超える場合や、現地で「働く」実態がある場合は、適切なビザの取得が義務付けられています。
| ビザの種類 | 主な対象者・目的 |
|---|---|
| 就業ビザ(General Employment Policy) | 駐在員や現地採用者が取得する最も一般的なビザです。学歴や専門スキル、現地での給与水準が審査対象となります。 |
| 投資ビザ(Investment Visa) | 香港で起業する、または事業に投資して経営に参画する場合に必要です。事業計画の妥当性や経済への貢献度が重視されます。 |
| 研修ビザ(Training Visa) | 最大12ヶ月まで、特定の技術や知識を習得するための研修目的で滞在する場合に適用されます。 |
| 家族ビザ(Dependent Visa) | 就業ビザ保持者の配偶者や子を同伴させる場合に必要です。このビザでも香港内での就労が認められる点が大きな特徴です。 |
ビザの規定は、国際情勢や政策により予告なく変更されることがあります。渡航計画を立てる際は、必ず以下の公式情報源を確認してください。
香港特別行政区政府 入境事務処(Immigration Department)
ビザ全般を管轄する機関です。最新の申請要件や電子ビザ(e-Visa)の申請・照会が可能です。
香港経済貿易代表部(Tokyo)
https://www.hketotyo.gov.hk/japan/jp
日本国内における香港政府の窓口です。ビジネス投資や人材誘致に関する相談、一般的なビザ情報の提供を行っています。
中華人民共和国大使館・領事館
http://jp.china-embassy.gov.cn/jpn/
日本国内でのビザ申請手続き(特に外交・公用など)を行う場合の公式窓口となります。
香港出張を成功させるためには、渡航直前のトラブルを防ぐ「トラブルを防ぐための事前準備」が欠かせません。出張者と企業の管理者がそれぞれ確認すべき項目を整理しました。
パスポートに不備があると、空港のチェックインカウンターで搭乗を拒否されるリスクがあります。
ノービザ滞在であっても、入国審査官から「滞在の正当性」を問われることがあります。以下の書類をデジタル(スマホ内)だけでなく、紙の控えとしても持っておくとスムーズです。
管理者は、社員の安全確保とコスト管理の観点から以下の点をチェックしてください。

香港国際空港は非常に効率的な設計がされていますが、近年、手続きのデジタル化が進み、以前の渡航時とはルールが異なっている点に注意が必要です。
飛行機を降りたら「Immigration(入境事務処)」の表示に従って進みます。
荷物を受け取った後は、税関(Customs)を通ります。香港はフリーポート(自由港)ですが、特定の品目には厳しい制限があります。
スムーズなビジネスのスタートを切るために、以下のリスクを回避しましょう。
ノービザの90日は「入国の翌日」からカウントされます。稀に入国審査官のミスで短い日数で処理されるケースがあるため、受け取った「入境ラベル」の期限が正しいか、その場で必ず確認してください。
「商談」ではなく、現地での「設備据え付け作業」や「長期的な技術指導」を行う場合、一般的な訪問者(Visitor)枠では認められず、トラブルになる可能性があります。実作業を伴う場合は、事前に「就業ビザ」の要否を現地法人と精査しておくべきです。
キズや汚れでICチップが読み取れないと、有人カウンターで大幅に時間を取られるだけでなく、不法入国防止の観点から厳しい確認を受けることがあります。
香港国際空港から市内中心部までは約35km離れていますが、インフラが非常に整っているため、移動は極めてスムーズです。スケジュールや予算に応じて、最適な手段を選択しましょう。
特徴: 最も速く、確実な移動手段です。渋滞の心配がなく、車内では無料Wi-Fiや充電ポート(先頭・最後尾車両)も利用可能。ビジネスマンに最も選ばれている最も一般的な選択肢です。
主要駅: 青衣(チンイー)、九龍(カウルーン)、香港(ホンコン)駅。
特徴: ホテルやオフィスへ直接向かいたい場合に便利です。香港のタクシーは行き先エリアによって色が分かれています。市内の主要エリア(中環や尖沙咀など)へ行く場合は、必ず「赤色(市區的士)」のタクシー乗り場へ進んでください。
特徴: 香港ではUberが広く普及しています。あらかじめ行き先を指定でき、クレジットカード決済が可能なため、現金の持ち合わせが少ない場合に重宝します。空港には専用のピックアップポイントが設けられています。
各交通手段の目安を以下の表にまとめました。
| 移動手段 | 料金目安(1HKD=約20円換算) | 市内への所要時間 | 備考 |
| エアポートエクスプレス | 約115〜130HKD(約2,300〜2,600円) | 約24分 | 香港駅・九龍駅から主要ホテルへの無料シャトルバスもあり |
| タクシー | 約300〜400HKD(約6,000〜8,000円) | 約30〜50分 | トランクの荷物1個につき6HKDの追加料金あり |
| Uber | 約300〜450HKD(約6,000〜9,000円) | 約30〜50分 | 需給により変動。Blackなど車種選択が可能 |
| 深夜バス(N系統) | 約25〜50HKD(約500〜1,000円) | 約60〜90分 | コスパ重視。深夜0時半〜早朝まで運行 |
香港は世界有数の金融都市であり、物価・家賃ともに世界トップクラスの高さで知られています。特に円安の影響もあり、日本人出張者にとっては「何を買うにも高い」と感じるのが現状です。
特に宿泊費は非常に高騰しており、東京のビジネスホテルと同じクオリティを求めると、倍以上の予算が必要になります。
※レート目安:1香港ドル(HKD)≒ 19〜20円前後で換算(変動あり)
香港のホテルは「価格が高い」だけでなく、土地不足のため**「部屋が非常に狭い」**のが特徴です。
数年前の感覚(1泊1.5万円〜2万円)では、衛生面やセキュリティに不安のある雑居ビル内の宿や、郊外のホテルしか選べない可能性が高いため注意が必要です。
| ホテルランク | 相場(1泊/1室) | 特徴・目安 |
| ラグジュアリー (5つ星) | 80,000円〜 | マンダリンオリエンタル、ペニンシュラ、リッツカールトンなど。 世界最高峰のサービスだが価格も青天井。役員クラスでも予算調整が必要。 |
| アップスケール (高級ビジネス) | 40,000円〜60,000円 | マリオット、シェラトン、日系(ニッコー等)の標準客室。 立地が良く、デスクワークができる広さが確保されるライン。 管理職以上の出張で推奨されるレベル。 |
| スタンダード (一般ビジネス) | 25,000円〜35,000円 | アイビス、ホリデイ・イン、現地チェーンなど。 清潔だが、部屋は15㎡前後と非常に狭いケースが多い。 スーツケースを広げるスペースがない場合もある。 |
| エコノミー | 20,000円以下 | 雑居ビル内のゲストハウスや、中心部から離れたエリア。 窓がない部屋も多く、ビジネス用途としては非推奨。 |
ローカルな食堂(茶餐廳)を除き、ビジネスエリアでの飲食費は東京よりもかなり高額です。
飲食費(ビジネス利用)
交通費
コンビニ・日用品
海外ホテルの価格推移や平均相場が知りたい方はこちらをご覧ください。
【2026年最新】世界の主要都市ホテル相場|海外出張の宿泊費目安リスト
香港は国際的でオープンなビジネス環境ですが、独自の商習慣や、近年特に厳格化されている公共ルールが存在します。
服装:基本的にはスーツ、またはジャケット着用が推奨されます。香港のビジネスマンは外見(身なり)を信頼の指標とする傾向が強く、特に金融・法律・大手企業との商談では保守的な正装が無難です。 夏季(5月〜9月)の屋外は酷暑ですが、ビル内や乗り物は「冷房が非常に強い」ことで有名です。外気に合わせた薄着のみだと体調を崩すため、夏場でもジャケットや薄手の羽織ものを常に用意してください。
挨拶: 挨拶は英語で行い、握手を交わすのが一般的です。
名刺交換: 日本と同様、両手で差し出し、両手で受け取ります。受け取った名刺はその場ですぐにしまわず、商談中は机の上に並べておくのがマナーです。相手の役職を尊重し、発音が不明な場合はその場で確認すると丁寧な印象を与えます。
香港は非常にクリーンで規律に厳しい都市です。特に2026年より規制が強化された項目には注意が必要です。
公共の場での喫煙に対する罰則が大幅に強化されました。
罰金: 禁煙区域での喫煙は、従来の1,500HKDから3,000HKD(約6万円)へ倍増しました。
区域: 屋内は原則全面禁煙。屋外でもバス停などの「列に並んでいる間」の喫煙が新たに禁止されています。
持ち込み: 電子タバコ・加熱式タバコの所持・使用は禁止されており、没収だけでなく刑罰の対象となります。
飲酒自体は自由ですが、路上での過度な泥酔や騒音は取り締まりの対象となります。また、地下鉄(MTR)の車内や改札内での飲食は厳禁(罰金対象)ですので、一口の飲み物でも控えるようにしましょう。
出張者の安全と企業のコンプライアンスを守るため、以下の3点を社内で周知してください。
ビジネスの場や公共の場では、政治的な議論やデリケートな社会問題に関する発言は控えるのが賢明です。現地パートナーとの信頼関係を維持するためにも、話題はビジネスや経済、文化に留めるよう指導しましょう。
「オクトパスカード(交通系IC)」があればほとんどの場所で決済可能ですが、タクシーや一部の飲食店では依然として現金のみのケースがあります。緊急時のために少額の現金を常備するよう伝えてください。
香港は無料Wi-Fiが充実していますが、セキュリティの観点から業務での利用は推奨されません。法人契約のローミングやeSIM、ポケットWi-Fiの準備を必須ルールとしましょう。
滞在最終日までビジネスに集中するためにも、出国手続きの効率化と期限管理は不可欠です。香港の先進的なシステムを活用し、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
香港国際空港は非常に効率的ですが、近年は保安検査の強化や旅客数の増加により、手続きに時間を要する場合があります。
出国審査の流れ
空港到着の推奨時刻
出発の3時間前の到着を強く推奨します。香港国際空港は非常に広く、搭乗ゲートまでシャトル(APM)で10分以上かかるケースも珍しくありません。
時短のコツ「インタウン・チェックイン」
エアポートエクスプレスの香港駅や九龍駅では、当日のフライトのチェックインと荷物預け入れが可能です(一部航空会社を除く)。手ぶらで空港へ向かい、そのまま保安検査へ進めるため、ビジネスマンには非常に有効な手段です。
香港当局は、滞在期限の遵守に対して非常に厳格な姿勢をとっています。
罰則の重さ
オーバーステイ(不法残留)は犯罪と見なされます。有罪判決を受けた場合、最大で50,000HKD(約100万円)の罰金および最長2年の禁錮刑が科される可能性があります。
再入国への悪影響
たとえ数日の超過であっても、一度オーバーステイの記録が残ると「ブラックリスト」に載る可能性が高くなります。次回の入国拒否や、将来的な就業ビザ申請の却下など、長期的なビジネスチャンスを失うリスクがあります。
管理の徹底
入国時に渡された「入境ラベル(Landing Slip)」に記載された期限を必ずリマインダーに登録し、1日の超過も出さないよう徹底してください。
商談の難航やプロジェクトの遅延により、当初の予定(90日以内)を超えそうな場合は、期限が切れる前のアクションが必須です。
申請のタイミング
滞在延長の申請は、現在の滞在期限が切れる4週間前から受け付けられます。ギリギリの申請は審査が間に合わないリスクがあるため、延長の可能性が出た時点で早めに動くことが鉄則です。
相談先と必要書類
香港湾仔(ワンチャイ)にある「入境事務処(Immigration Tower)」の窓口、またはオンラインで申請します。延長が必要な理由を証明する資料(会社からのレター、帰国便の変更証明など)が必要になります。
企業側の対応
出張者が自力で手続きを行うのは負担が大きいため、現地の法律事務所やビザコンサルタントと連携できる体制を整えておくことが、企業の安全配慮義務としても重要です。
香港の渡航ルールやビジネス環境は変化が早いため、出発直前には必ず以下の一次情報(公式機関の発信)を確認してください。
香港特別行政区政府 入境事務処(Immigration Department)
ビザ申請、電子ビザ(e-Visa)、入国規定の最上位ソースです。2024年10月の「出入国カード提出不要」などの最新ルールもこちらで公示されます。
日本国内の公式窓口。ビジネス投資や渡航に関する日本語のガイダンスが充実しています。
香港海関(Customs and Excise Department)
12万香港ドル以上の現金持ち込み申告や、免税範囲(タバコ・アルコール)に関する詳細情報。
治安情勢、感染症、デモや社会情勢に伴う注意喚起など。
現地でのトラブル(パスポート紛失等)の対応や、日本人向けの安全対策マニュアルが公開されています。