もくじ
東ティモール民主共和国は、2002年に独立した21世紀最初の独立国です。近年は、石油・天然ガスなどの資源開発、インフラ整備、農業開発を中心に日本企業の進出やビジネス機会が増加しています。
しかし、日本から東ティモールへの直行便はなく、入国管理や治安維持、通信環境といったインフラ面では、他の東南アジア諸国とは異なる独自の準備が必要です。企業の管理者は、出張者が現地で安全かつ円滑に業務を遂行できるよう、最新の渡航ルールとリスク管理を事前に把握しておく必要があります。
東ティモールの玄関口は、首都ディリに集約されています。ビジネス出張の際、ほぼ全ての渡航者が以下のルートを利用することになります。
東ティモールの首都であり、政治・経済・文化の唯一のハブです。政府機関、外資系企業、NGO、日本大使館のほとんどがディリに集中しています。
国内唯一の国際空港です。2026年現在、日本からの直行便はなく、シンガポール(Scoot/スクート航空)、バリ(インドネシア)、ダーウィン(オーストラリア)等からの経由便が主流です。
※日本の支援により滑走路拡張や新ターミナル建設が進んでいますが、現時点では小規模な空港のため、入国審査には時間がかかることを想定したスケジュール管理が推奨されます。
東ティモール入国に関しては、近隣諸国に比べて手続きの変更頻度が高いため、事前の徹底確認が欠かせません。
日本国籍のパスポート保持者が、30日以内の商談や会議などの短期ビジネス出張を行う場合、事前にビザを取得する必要はありません。
東ティモール入国時に、パスポートの有効期限が「6ヶ月以上」残っていることが必須条件です。この条件を満たしていない場合、経由地(シンガポールやバリ)でのチェックイン時に搭乗を拒否されるリスクが極めて高いため、有効期限が1年を切っている場合は早めの更新を推奨します。
入国審査時に、「帰路の航空券(または第三国へ抜ける航空券)」の提示を求められます。また、滞在先のホテル予約確認書なども提示できるよう、紙の控えまたはオフラインでも見られるデジタルデータを持たせておくことが望ましいです。
東ティモールへのビジネス渡航では、滞在日数や目的に応じて必要な手続きが異なります。特に「短期商用」の場合は、事前のビザ取得が不要なケースが多く、利便性は高いと言えます。
日本国籍のパスポートを保持し、30日以内の「商用(商談、会議、市場調査等)」目的で入国する場合、事前に大使館でビザを取得する必要はありません。
ディリのプレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港に到着後、入国審査カウンターの手前にあるビザ申請窓口で取得します。
1回に限り、現地入国管理局でさらに30日の延長が可能です(最大60日まで)。
【管理者へのアドバイス】 現地の空港では「お釣りがない」と言われるトラブルが散見されます。出張者には、30ドルちょうど(10ドル札3枚など)を日本国内、または経由地のシンガポール等で準備させておくことを強くお勧めします。
30日を超える滞在や、現地での報酬が発生する就労(技術指導、長期プロジェクトへの参画など)を目的とする場合は、オンアライバルビザではなく、目的に合わせた適切なビザを取得する必要があります。
これらのビザは、原則として渡航前に駐日東ティモール民主共和国大使館にて申請・取得する必要があります。手続きには数週間を要する場合があるため、余裕を持ったスケジュール管理が求められます。
ビザ要件は、現地の情勢や外交関係により予告なく変更される場合があります。正確な最新情報を入手するため、必ず以下の公式サイトや窓口を確認してください。
駐日東ティモール民主共和国大使館
ビザ申請の要否や必要書類に関する最新の公式情報を確認できる、最も確実な窓口です。
東ティモール入国管理局(Immigration Service of Timor-Leste)
到着ビザの規定や、現地でのビザ延長手続きについて詳細が記載されています。
外務省 海外安全ホームページ
東ティモールの基本的な入国制度のほか、治安情勢や感染症情報についても網羅されています。
東ティモール出張を成功させるためには、出張の成否は出発前の準備で大きく左右されます。特に入国審査や現地での緊急対応において、書類の不備は大きなリスクとなります。以下の項目を、出張者と管理者の双方で確認してください。
東ティモール当局は、パスポートの条件に対して非常に厳格です。条件を満たさない場合、日本出発時、または経由地の空港(シンガポールやバリ)で搭乗を拒否されます。
残存有効期間:入国時に「6ヶ月以上」必須
有効期限が1年を切っている場合は、余裕を持って更新しておくことを強く推奨します。
査証欄の余白:見開き1ページ(2ページ分)以上を推奨
到着ビザ(Visa on Arrival)のステッカーは、パスポートの1ページを丸ごと使用します。余白が足りない場合は事前にパスポートの増補(現在は切替発給)が必要です。
パスポートの損傷確認
ページが剥がれかけている、激しい水濡れ跡があるなどの損傷があると、入国を拒否されるケースがあります。
到着ビザの取得や入国審査をスムーズに進めるため、以下の書類を必ず「必ず紙でプリントアウトして携行してください(現地では通信環境が悪く、スマホの画面が表示できないリスクがあります)。
往復航空券(Eチケット控え):必須
出国(第三国へ抜ける)の航空券がないと入国できません。
ホテル予約確認書:必須
滞在先の住所と電話番号を入国カードに記入する必要があります。
現地の取引先からの招へい状(Invitation Letter):推奨
ビジネス目的の場合、現地パートナー企業からの招へい状があると、入国審査官に対して渡航目的を明確に証明でき、手続きが円滑になります。
英文の在職証明書:推奨
公的な身分証明として、特に長期滞在や特殊な機材を持ち込む場合に役立つことがあります。
管理部門としては、出張者の安全を守る「安全配慮義務」の観点から、以下の社内体制を再点検してください。
出張規程の確認と日当の支払い準備
東ティモールは米ドル経済であり、物価(特に外国人向けホテルやレストラン)は周辺国に比べて高めです。現行の日当設定が現地の実情に合っているか確認してください。
「たびレジ」への登録徹底
外務省の海外旅行登録「たびレジ」への登録を必須としてください。現地の政情不安や災害情報をリアルタイムで受け取ることができます。
緊急連絡網の整備
現地での通信手段(国際ローミングやWi-Fiレンタル)の確保と、夜間・休日を含めた社内の緊急連絡ルートを確定させておいてください。
ディリの空港に到着したら、まずは徒歩またはバスでターミナルビルへ向かいます。小規模な空港のため迷うことはありませんが、手続きの順番を把握しておくことでスムーズに通過できます。
入国手続きは、「ビザ取得(必要な場合)」と「入国審査」の2ステップに分かれています。
1.到着ビザ(VOA)の取得
入国審査カウンターの手前にビザ申請窓口があります。日本国籍で短期商用の場合はここでパスポートを提示し、30米ドルを支払います。
注意: クレジットカードは一切使えません。お釣りがないと言われるケースが頻発するため、必ず「30ドルちょうど」を準備して並んでください。
2.入国審査(イミグレーション)
ビザ取得後、審査官にパスポート、航空券の控え、そして「オンライン入国カード」のQRコードを提示します。
重要: 現在、東ティモールでは入国カード・税関申告書のオンライン化が進んでおり、原則として事前登録(到着の4日前から可能)が必要です。登録後に発行されるQRコードは、オフラインでも表示できるよう必ずスクリーンショットを保存しておいてください。
荷物をピックアップした後は、出口手前の税関検査へ進みます。
東ティモールは入国管理が厳格化されており、意図しないミスが深刻なトラブルに発展することがあります。
1日でも滞在期限を過ぎると、出国時に高額な罰金(1日あたり数十ドル〜)が科されるだけでなく、拘束されたり、将来的な入国禁止リストに載るリスクがあります。フライトの遅延や欠航も考慮し、余裕を持った日程でビザ(30日間)を管理してください。
「短期商用(会議や調査)」で入国したにもかかわらず、現場での実作業(工事や技術指導など)に従事していると判断されると、不法就労とみなされる恐れがあります。活動内容が複雑な場合は、事前に駐日大使館へ適切なビザの種類を確認しておくことが、企業のリスク管理として不可欠です。
プレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港からディリ市内中心部までは約6km、車で15〜20分程度の距離です。公共交通機関の選択肢が限られているため、事前の手配や料金相場の把握が重要になります。
東ティモールにはメトロ(鉄道)や、Grab・Uberなどの配車サービスは一切存在しません。 移動手段は以下の3つに限定されます。
最も一般的な移動手段です。
イエロータクシー: 街中を走る個人タクシー。メーターはなく、事前の料金交渉が必須です。
ブルータクシー: 電話呼び出し制のタクシー。車両が比較的新しく、メーター制を採用しているためビジネス利用に適しています。
多くの主要ホテルが提供しているサービスです。安全面と利便性から、ビジネス渡航では「ホテルの送迎車」を事前に予約しておくのが最も推奨される選択肢です。
現地市民の足である乗り合いミニバン。一律0.25ドルと安価ですが、路線図がなく、大きな荷物を持った出張者の利用には向きません。
東ティモールは米ドル経済であり、近隣諸国に比べて交通費はやや高めに感じられるかもしれません。
| 移動手段 | 料金目安(空港〜市内) | 所要時間 | 備考 |
| タクシー | 10〜15米ドル | 約15〜20分 | 空港出口に固定料金表が掲示されている場合があります。 |
| ホテル送迎 | 15〜25米ドル | 約15〜20分 | 宿泊費に含まれる場合や、専用車手配により変動します。 |
| ミクロレット | 0.25米ドル | 30分以上 | 空港敷地外の幹線道路まで歩く必要があります。 |
東ティモールでは、礼儀正しさと人間関係の構築がビジネスの成否を分けます。他国とは異なる時間感覚や価値観があることを理解し、適切な振る舞いを心がけることが重要です。
気温が高いため、日常的な訪問では「シャツ(ネクタイなし)とスラックス」が一般的です。ただし、政府高官との面談や公式な場では「スーツ・ネクタイ着用」が求められます。女性も露出の多い服装を避け、落ち着いたビジネスウェアが適しています。
挨拶は握手が基本です。相手が年配者や地位の高い方の場合は、丁寧な言葉遣い(英語またはテトゥン語の挨拶)を添えると好印象を与えます。
東ティモールでは「ゴムの時間(Rubber Time)」と呼ばれるほど、予定が遅れることが一般的です。しかし、日本側は時間は厳守すべきです。商談の前日にリマインド(確認の連絡)を入れることが、予定を確実に遂行するコツとなります。
国民の90%以上がカトリック教徒です。教会の近くでの振る舞いや、宗教的な行事、像などに対して不敬な態度を取ることは厳禁です。
イスラム教国のような厳格な禁酒法はありませんが、公共の場(特に路上や公共施設)での飲酒は避け、レストランやホテル内で行うのがマナーです。
政府施設、空港、軍事関連施設の撮影は厳しく禁止されています。また、現地の人を撮影する場合は、トラブルを避けるため必ず事前に許可を得るよう指導してください。
安全配慮義務の観点から、企業は出張者に対し、以下の行動ルールを「厳守事項」として共有してください。
首都ディリであっても、夜間は街灯が少なく、強盗やひったくりのリスクが高まります。短距離であっても夜間は必ず信頼できるタクシーやホテルの車を利用させてください。
市内には多くの野犬がおり、狂犬病のリスクがあります。また、海岸線の一部ではワニ(クロコダイル)による被害も報告されています。「むやみに動物に近づかない」「指定された場所以外で海に入らない」ことを徹底してください。
デモや集会は予期せず衝突に発展する可能性があります。群衆を見かけたら直ちにその場を離れるよう周知してください。
ホテルのWi-Fiは不安定なことが多いです。現地SIMの購入や、日本からのローミング、海外用Wi-Fiルーターの持参など、常に連絡が取れる状態を維持させてください。
東ティモールからの出国は、入国時と同様にディリの空港を利用します。小規模な空港ながら、手続きの遅延や法規制の遵守には細心の注意を払う必要があります。
空港到着の推奨時刻:出発の2〜3時間前
ターミナル内への入場時に手荷物検査があり、混雑時には列が進まないことがあります。また、航空会社のチェックインカウンターが早めに閉まる傾向があるため、出発の2時間半前には空港に到着しておくのが安全です。
出国手続きの流れ
チェックインを済ませた後、出国審査(Immigration)へ進みます。ここでパスポートと搭乗券、そして滞在期限(入国スタンプ)を確認されます。
出国税(空港使用料)について
以前は現金で支払う必要がありましたが、現在は航空券代金に含まれているケースがほとんどです。ただし、稀に航空会社や経由地によって別途徴収される可能性があるため、念のため少額(10〜20ドル程度)の現金を手元に残しておくよう出張者に伝えてください。
東ティモール政府は不法滞在に対して非常に厳しい姿勢をとっています。
罰金の発生
滞在期限を1日でも過ぎると、出国時に高額な罰金が科されます。金額は状況により変動しますが、1日あたり数十米ドルが目安となり、その場で現金支払いを求められます。
再入国への悪影響
悪質なオーバーステイと判断された場合、ブラックリストに登録され、今後の入国拒否やビザ発給制限を受けるリスクがあります。
「猶予期間」はない
周辺諸国で見られるような数日の猶予(Grace Period)は原則として存在しません。フライトの欠航など不可抗力であっても、速やかに入国管理局へ届け出ない限り、オーバーステイとして扱われる恐れがあります。
プロジェクトの進捗遅延などで当初の30日を超える滞在が必要になった場合は、期限が切れる1週間前までにアクションを起こす必要があります。
現地入国管理局での手続き
ディリ市内にある入国管理局(Immigration Service)で延長申請を行います。申請から承認まで数日〜1週間程度かかるため、期限直前の申請は避けるべきです。
企業側のバックアップ
延長申請には「なぜ滞在を延ばす必要があるのか」を説明するレター(会社からの公式文書)が求められる場合があります。管理者は、必要に応じて速やかに書類を発行できる体制を整えておきましょう。
管理部門への早期報告ルール
「帰国便の変更を検討し始めた段階」で必ず社内報告させるルールを徹底してください。ビザの残日数を確認せずに航空券だけを変更し、結果的に不法滞在になってしまうミスを防ぐためです。
東ティモールの入国制度や治安情勢は、事前の予告なく変更される場合があります。出張前および滞在中も、以下の公的機関から発信される最新の一次情報を常に確認するようにしてください。
現地の最新の危険情報、感染症情報、入国制限の有無を確認できる、日本政府の公式ポータルです。
現地での緊急事態(パスポート紛失や重大なトラブル)の際に援護を受けるための窓口です。所在地:Dili, Timor-Leste(Avenida de Portugal)。
東ティモール入国管理局(Service of Immigration)公式サイト
到着ビザ(VOA)の詳細や、オンライン入国カードの登録フォーム、滞在延長に関する規定が掲載されています。
出張者が不測の事態に巻き込まれた際、日本大使館から緊急連絡をメール等で受け取ることができる必須の登録サービスです。