これまで日本国籍のパスポート保有者は、ヨーロッパに渡航する際、ビザを取得することなく、出張・観光することができました。しかし、今後は、渡航にあたりETIASの申請が必須になると言われています。ETIASとは、アメリカ渡航におけるESTAのようなもので、渡航の前にオンライン上で渡航許可を取得する仕組みを指します。
本日は、ETIASの概要や取得の手続きについて解説します。
※本情報は、2025年4月時点の情報となります※
もくじ
EU諸国への渡航にあたり、ETIASが話題になっていますが、同時にEESというシステムも把握しておくとよいでしょう。
EUは、非EU国籍者の入国管理を効率的に管理するために、出入国管理システム(EES)と欧州渡航情報認証システム(ETIAS)という2つの新しいシステムの導入を準備してきました。二つのシステムは似て非なるシステムです。詳細は後述しますが、まずは両者の違いについて大枠を把握しておくとよいでしょう。
出入国管理システム(EES)は、シェンゲン協定加盟国への出入国記録・管理と国境管理の効率化を目的としており、シェンゲン協定加盟国へ短期滞在(90日以内)するEU域外国籍者全員が対象になります。それに対して、欧州渡航情報認証システム(ETIAS)は、渡航前にビザ免除対象者のリスク審査・事前認証することを目的としており、シェンゲン協定加盟国へ短期滞在(90日以内)するビザ免除国籍者を対象としています。
日本国籍者は、シェンゲンビザを必要としないため、今後、EU諸国へ渡航する場合は、出入国管理システム(EES)と欧州渡航情報認証システム(ETIAS)の認証を受ける必要があります。
下記に両者の違いを表で整理します。
項目 | 出入国管理システム(EES) | 欧州渡航情報認証システム(ETIAS) |
---|---|---|
目的 | シェンゲン協定加盟国への出入国記録・管理と国境管理の効率化 | 渡航前にビザ免除対象者のリスク審査・事前認証 |
対象者 | シェンゲン協定加盟国へ短期滞在(90日以内)するEU域外国籍者全員 | シェンゲン協定加盟国へ短期滞在(90日以内)するビザ免除国籍者 |
申請の必要性 | 不要(国境で自動的に登録) | 必要(渡航前にオンライン申請・認証取得) |
取得・登録方法 | 入国時にパスポート・生体情報(指紋・顔写真)を国境で登録 | オンライン申請(パスポート情報・個人情報・申請料) |
導入予定時期 | 2025年内(予定) | 2026年第4四半期(EES導入から約6か月後) |
有効期間 | 1回の渡航ごとに記録(データは一定期間保存) | 3年間またはパスポート有効期限まで(どちらか早い方) |
主な利用場面 | 空港・港・陸路国境での出入国手続き | 渡航前の事前認証(ESTAの欧州版) |
連携 | ETIAS認証済みパスポートも対象、ビザ取得者も対象 | EESの記録と連動し、国境での最終審査時に参照される |
主な目的 | 不法滞在防止、犯罪・テロ対策、国境管理の効率化 | 渡航者のリスク評価、治安維持、非正規移民や危険人物の事前排除 |
生体認証 | あり(指紋・顔写真の取得) | なし(オンラインでの情報入力のみ) |
手数料 | なし | 7ユーロ(18歳未満・70歳以上は無料) |
ETIAS(European Travel Information and Authorisation System)とは、今後、EU諸国へ入国する際に必要となる「事前渡航認証システム」です。日本語では「欧州渡航情報認証制度」と訳され、一般的なEU諸国への旅行に際し簡単な手続きでビザが不要になる便利な渡航認証です。米国では、入国の際にESTAの申請が必要になりますが、欧州でも同様の仕組みが導入されました。
EU諸国への入国というとシェンゲンビザを思い浮かべる方も多いと思います。シェンゲンビザとは、ヨーロッパのシェンゲン圏内における自由な移動を許可することを目的としたビザです。最大90日間の滞在でシェンゲン圏内への旅行を希望する観光客やその他の短期旅行者を対象としています。
日本国籍のパスポート所有者は、シェンゲンビザを取得することなく、シェンゲン圏内の渡航・滞在が可能でした(例外となる国あり)。しかし、今後は、ビザ免除の適用を受けている日本国籍パスポート保有者であっても観光、ビジネス、または通過目的(トランジット)のためにヨーロッパに旅行するにはETIASが必要となります。
2025年4月現在、入国にあたってETIASの申請が必要な国は30カ国あります。
アイスランド、 イタリア、 エストニア、 オーストリア、 オランダ、 キプロス、 ギリシャ、 クロアチア、 スイス、 スウェーデン、 スペイン、 スロバキア、 スロベニア、 チェコ、 デンマーク、 ドイツ、 ノルウェー、 ハンガリー、 フィンランド、 フランス、ブルガリア、ベルギー、 ポーランド、 ポルトガル、 マルタ、 ラトビア、 リトアニア、 ルクセンブルク、 ルーマニア、リヒテンシュタイン |
ETIAS(エティアス)の有効期間は原則として3年間となります。ETIAS(エティアス)の有効期間内であれば何度でも対象国に渡航することが可能です。ただし、3年以内にパスポートの有効期限が切れてしまう場合は、パスポートの有効期限日を以てETIAS(エティアス)も失効となりますので注意が必要です。
ETIAS(エティアス)で入国した場合、一度の渡航につき最長90日以内の滞在が認められます。ただし、ETIASを利用する場合、渡航目的は一般的な観光か現地での就労を伴わない短期のビジネスに限定されます。90日以上の滞在やETIAS加盟国での就労(アルバイトを含む)を希望する方はビザの取得が必要となるのでご注意ください。
ETIASの申請及び承認までの流れは以下の通りです。
ETIASの申請サイトにて、申請フォームに必要事項を入力し、申請料を支払い、審査を依頼します。なお、ETIAS申請のための公式は下記の通りです。
申請フォームの入力完了後は、ETIASの専門審査機関にて審査を行います。申請から審査結果が届くまで最大で4週間ほどかかると言われているため、なるべく早めの申請を心がけましょう。
審査の後、ETIASの渡航認証の許可が下りた場合は、「渡航許可通知」としてETIAS番号が発行されます。この番号は渡航から帰国まで必要となるため、プリントアウトをしてパスポートと一緒に保管すると良いでしょう。
ETIASの渡航許可通知を取得後、航空券に搭乗しましょう。なお、搭乗する航空会社のスタッフからETIAS取得の有無を求められる場合もあるため、ETIAS番号は手元に控えておきましょう。パスポートと共に提示してもよいでしょう。
ETIASの申請費用は、7ユーロになる見通しです。なお、18歳以下及び70歳以上の渡航者は申請料が無料になるようです。ただし、ETIASの申請自体は年齢問わず必須のため、申請漏れがないようにご注意ください。
ETIASの申請は、ESTA同様、電子申請のみとなります。申請にあたっては、パスポート情報が必要になるため、有効期限内のパスポートをご用意ください。また、申請時にクレジットカードによる支払いが必要となります。ただし、クレジットカードの名義はご本人名義である必要はありません。
現時点では、申請フォームは開示されていませんが、下記の情報を入力する必要があると言われています。
参考:EU公式サイト
https://travel-europe.europa.eu/etias/who-should-apply_en
ETIASの導入にあたっては、技術的要件や加盟国間の調整も影響もあり、延期が続いています。2025年4月時点では、ETIASは2026年第4四半期(10~12月)に導入予定としています。
Revised timeline for the EES and ETIAS
ESSESS(Entry/Exit System)とは、ETIAS同様に、今後、EU諸国へ入国する際に必要となる「事前渡航認証システム」です。日本語では「出入国管理システム」と訳され、欧州諸国の国境を通過するたび、出入国を記録するための自動化システムです。本システムにより、従来の手作業によるパスポートへのスタンプ処理が不要となり、より効率的で正確な入国管理が可能となります。
2025年4月現在、入国にあたESSSSの申請が必要な国は29カ国あります。
アイスランド、 イタリア、 エストニア、 オーストリア、 オランダ、 ギリシャ、 クロアチア、 スイス、 スウェーデン、 スペイン、 スロバキア、 スロベニア、 チェコ、 デンマーク、 ドイツ、 ノルウェー、 ハンガリー、 フィンランド、 フランス、ブルガリア、ベルギー、 ポーランド、 ポルトガル、 マルタ、 ラトビア、 リトアニア、 ルクセンブルク、 ルーマニア、リヒテンシュタイン |
ESSが導入されると、空港や港、国境のEES専用キオスク(自動端末)で手続きを行います。具体的には、自身パスポートをスキャンし、氏名・旅券情報・入国日・入国地などを登録します。なお、初回利用時は、指紋採取と顔写真撮影(バイオメトリクス登録)が必要です。また、12歳未満の子どもは指紋登録が免除されます。
詳細は、ESSの公式サイトをご覧ください。
ETIASの導入にあたっては、技術的要件や加盟国間の調整も影響もあり、延期が続いています。2025年4月時点では、EESは2025年10月に導入予定としています。
ヨーロッパへのご出張が多い企業にとってETIASやESSは気になる制度だと思います。特にETIASについては事前申請が必要なため導入時期を把握しておきたいところでしょう。ボーダーでは、ETIASの詳細を随時アップする予定なのでよろしければ定期的に本ページにアクセスください。
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